フッサール

Edmund Husserl

1859年4月8日 — 1938年4月27日
オーストリア帝国プロスニッツ(現:チェコ・プロスチェヨフ)生まれ

略歴

モラヴィア(現チェコ)のユダヤ系商人の家庭に生まれる。ライプツィヒ大学・ベルリン大学で数学・物理学・天文学を学び、ウィーン大学で数学の博士号を取得した。ウィーンではブレンターノの哲学講義に出会い、哲学へと転じた。

1887年にハレ大学で哲学の私講師となり、1900〜1901年に主著『論理学研究』を刊行。1906年にゲッティンゲン大学の教授となり、多くの学生を集めた。1916年にフライブルク大学の哲学教授に就任し、1928年に退職するまで同地で研究を続けた。ナチス政権下でユダヤ人として迫害を受け、図書館の利用も禁じられたまま1938年に没した。膨大な草稿はベルギーに持ち出されて保存され(フッサール文庫)、現代に伝わっている。

主要著作

『イデーン』について

『イデーン』第1巻(1913年)は、フッサールが現象学の方法と原理を体系的に述べた主著である。正式タイトルは「純粋現象学および現象学的哲学の諸構想」。

中心となる方法は「エポケー(判断停止)」と「現象学的還元」である。物が意識の外に独立して存在するという自然的な確信を「括弧に入れ」、意識にとっての対象としての現れ方そのものを精密に記述することを目指す。物は「志向的対象」として、つねにある視点から、ある一面を通してのみ立ち現れる。意識はこの現れの系列を貫いて、同一の一つの物として綜合する。この綜合の働きを解明することが現象学の課題である。

この書に沿って「物」を定義するとすれば

フッサールにおいて、物を「意識の外に独立して存在する」とみなす自然的態度はまず括弧に入れられる。問われるのは、物が意識にとってどのように現れるか——その現れ方の構造そのものである。

定義文

『物とは、意識から独立に存在するという自然的確信を括弧に入れたうえで、意識にとっての志向的対象として現れ直すものであり、つねにある一面を通してのみ立ち現れながら、意識がその現れの系列を貫いて綜合する超越的統一である。』

このリンゴを見る。私にはリンゴの正面が見える。しかし同時に、背面がある、内部がある、という「空虚な予期」が伴っている。私が回り込めば、別の一面が現れ、最初の一面は「今は見えていないが存在する」として沈む。物は決して全体を一挙に与えない。しかし私は、これらの現れの系列を通じて、同一のリンゴとして綜合する。物とは、この尽きせぬ現れの系列を貫いて意識が綜合する「同一のもの」——志向的対象として成立する超越的統一である。

生没年・略歴は一般的な資料に基づく。