ベルクソン
Henri Bergson略歴
パリのユダヤ系の家庭に生まれる。父はポーランド出身の音楽家、母はイギリス系であった。リセ・コンドルセで学び、数学にも文学にも秀でた。1878年にエコール・ノルマル・シュペリウール(高等師範学校)に入学し哲学を専攻。卒業後はアンジェやクレルモン=フェランのリセで哲学教師を務めた。
1896年にパリのリセ・アンリ=カトルの教師となり、1897年以降エコール・ノルマルで教えた。1900年にコレージュ・ド・フランスの哲学教授となり、その講義は一般聴衆を集める知的イベントとなった。1907年の『創造的進化』でノーベル文学賞(1927年)を受賞。晩年は国際連盟の文化委員会委員長を務め、第二次世界大戦中のナチス占領下のパリで没した。
主要著作
- 1889年『意識に直接与えられたものについての試論』(時間と自由)
- 1896年『物質と記憶』
- 1900年『笑い』
- 1907年『創造的進化』
- 1932年『道徳と宗教の二源泉』
『創造的進化』について
ベルクソン48歳のときに刊行された主著の一つ。生命の進化を「エラン・ヴィタール(生命の飛躍)」という概念で捉え直すことを試みる。ダーウィンの進化論を受けながら、機械論的・目的論的説明のいずれも生命の創造的本質を捉えられないと論じる。
本書の核心にあるのは、知性と直観の対立である。知性は実用的な必要から生まれた認識能力であり、運動する実在を固定した断片として捉える。物体という概念は、この知性の働きによって、絶えず流れる実在から切り取られた静止の像にすぎない。真の実在は「持続」であり、それは知性ではなく直観によってのみ捉えられる。
この書に沿って「物」を定義するとすれば
ベルクソンにおいて、固い物体という像は抽象の産物である。実在はたえず流れ変化する持続であり、物とはその流れのなかから知性が人為的に切り取った静止の断片にすぎない。
定義文
『物とは、固定した空間的延長として捉えられるものではなく、絶えず流れ変化する持続のなかで、知性によって人為的に切り取られた静止的な断片として現れるものである。』
実在はたえず流れる。川の流れを見よ——それは一瞬たりとも同じ状態にない。しかし知性は、実用的な必要から、この流れに「物」という固定した単位を見出す。映画のフィルムが動きを静止画の連続として捉えるように、知性は持続する実在を空間のなかに並べられた瞬間の断片として捉える。物体とは、この知性の操作によって流れから切り取られた像である。真の実在は持続であり、物はその持続を空間化することで生まれた抽象にすぎない。